「いのちの授業」
愛知みずほ大学大学院教授 薬師寺 道代 先生
１１月２０日、３・４時限に講演会を実施しました。講演者は、愛知みずほ大学の薬師寺先生です。薬師寺先生は、れっきとしたお医者さん。今は、大学で学生に教鞭をとってみえます。
薬師寺先生のお話に、子どもたちは引き込まれていきました。先生がかつて勤めてみえた病院での、つらい悲しいお話です。先生の手記を抜粋し、紹介します。この文のお医者さんとは、薬師寺先生のことです。
『小さな手の中のいのち』
その人は、40歳の女の人でした。いつもおとなしくて、おだやかに微笑んでいる人です。明るく素直な５年生の女の子のお母さんでした。でも、彼女のお腹にはがんができていたのです。手術をしても治らないくらい悪くなっていて、もうあまり長くは生きられないはずです。周りの人たちは、そのことを隠していました。
けれど、ある日彼女はお医者さんに尋ねました。
「本当の病名を教えてください。」
その問いかけには、静かだけれど強い意志が感じられました。お医者さんも、この人には正直に答えるべきだと思いました。
「がんです。」
「どのくらい生きられますか。」
「あと３ヵ月です。」
「では、家に帰らせてください。なるべく子どものそばにいたいのです。」
彼女はやはり静かに言いました。
退院してからが、彼女の闘いの始まりでした。がんは体の内側から激しい痛みが襲います。体がむくんで、おしっこも出なくなります。そうした苦しみは時を選ばず患者を襲うのです。でも、彼女が痛みや熱で病院に駆け込むのは、いつもきまって真夜中でした。
「どうしてこんなになるまで我慢してしまうの？」
お医者さんが強く聞くと、彼女は答えました。
「娘には具合の悪いところを見せたくないんです。」
治療を受けると翌朝、点滴を鞄に入れて娘さんの登校時間までには帰っていきます。最後まで、ふつうのお母さんでいたかったのでしょう。
２カ月が過ぎました。けれど、その間にも彼女は弱り、やせ衰えていきました。いつものように真夜中にタクシーでやってきた彼女に、お医者さんは点滴を打ちながら言いました。
「次にいらしたときは、もう家には帰れません。よろしいですか？」
「わかりました。」
彼女は静かに答えました。
１週間後、そのときはやってきました。
「よろしいですか？」
もう一度、お医者さんは尋ねました。
「おととい、娘の大好きなケーキも作りました。映画にも行きました。そして私も美容院にまいりました。もう、結構です。」
死を前にしているのに、彼女の顔には、あの穏やかな微笑みが浮かんでいました。
そして、３日後。最期のときも彼女らしく、静かに息を引き取りました。小学校に行っていた娘さんは臨終に間に合わず、一人でなくなっていきました。
お医者さんたちは待っていました。死化粧の最後に、肩にかかった長い髪を三つ編みにして。やがて娘さんがランドセルをゆすって駆け込んできました。娘さんは泣きながら、けれども冷静でした。
「お母さん、ありがとう。ありがとう。」
さっきまで温かかった手を握り、さすります。
そして、お母さんの三つ編みに、彼女が好きだったリボンを結んであげました。小さなその手は、いのちを静かに受け入れていました。 (おわり)
このお話を聴いて、子どもたちなりに「命の大切さ、尊さ」について考えることができました。後で、校長室にて聴いたお話で、私たち大人がぜひ考え、実行していきたいと思うことがありました。そのお話の要旨は次のとおりです。
『いのちとは、本来教えられるものでもなければ、教わるべきものでもなく、成長過程で自然と身についていく感覚です。いのちを伝えることは、「生きている感覚」を伝えることです。いのちとは生活そのものですから、机上の空論ではなく、お料理をしながら、テレビを見ながら、お風呂に入りながら、気楽に話題にしていきたいですね。』
当日、保護者の方々約40〜50名も来ていただきました。私たちは毎日健康で生活できることに感謝しつつ、子どもたちには「かけがえのない生命の大切さ、尊さ」について折にふれ、話をしていかなければと思います。
明日の学芸会へどうぞ！
１５日の１年・６年の様子
昨日、学芸会の校内発表会を行いました。明日の学芸会は、児童は他の学年の演技を見ることができません。従って、昨日、他の学年の鑑賞を兼ねて発表会を行いました。
どの学年もすばらしい演技で、練習の成果を十分発揮しました。明日は、午前９時開始予定です。２年、４年、５年、３年、１年、６年の順で、プログラムを進行します。子どもたちのすばらしい演技を楽しみにしてください。みなさんのご来校を心からお待ちしております。